法律Q&A

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相隣関係

隣地との筆界特定の方法

1.  

自宅の敷地が隣地と繋がっているのですが、境界が曖昧で将来、隣人とトラブルにならないか気にしています。なるべく費用をかけずにトラブルを防ぐために、なにか良い方法はないでしょうか。

まずは、隣地の所有者と協議して、資料を持ち寄り、現場で立ち合いをして、双方が納得して筆界を確認し合意することが考えられます。合意は書面に残し、合意された筆界には境界標を入れるなどすれば、将来のトラブルを防止することができます。当事者間で協議をしても合意に至らない場合には、法務局で筆界特定制度を利用することができます。筆界特定制度は、筆界特定登記官が、外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて、現地における土地の筆界の位置を特定する制度です。

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2.  

筆界特定の結果に納得できない場合は、どのような手段がありますか。

隣地の所有者を被告として、筆界確定訴訟により争うことができます。裁判所は、いずれかの地点を示して必ず筆界を確定します。筆界確定訴訟の判決の効力は、一般的な訴訟と異なり、当事者以外の第三者にも効力を及ぼします。

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3.  

筆界特定を行った事案で、納得できずに筆界確定訴訟をした場合、判断を覆せることはあるのでしょうか。

筆界特定手続きでは、登記所に保管されている官民境界に係る確定図、航空写真などの資料や、現地の土地の地形、占有状況及び筆界を示す構造物等をも考慮したうえで、筆界に関する専門家である筆界調査委員の意見も踏まえ、筆界特定登記官が現地において筆界の位置を特定します。裁判手続きにおいても、こうした専門的な知見にもとづく筆界特定手続きの結果が参照されるため、筆界特定の結果と異なる結果が示されることは少ないといわれています。

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4.  

筆界を確定した結果、私の家の塀が、筆界を越えた隣地の土地上に存在することが判明しました。隣地の所有者から塀の撤去を求められた場合、撤去しなければならないのでしょうか。

塀の撤去を求められた場合には、原則として撤去しなければなりませんが、一定の要件をみたす場合には、時効取得を主張できます。すなわち、20年間所有の意思をもって、平穏かつ公然に他人の土地を占有した場合(民法162条1項)、もしくは他人の土地であると過失なく知らずに、10年間所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の土地を占有した場合(民法162条2項)には、占有部分の所有権を時効により取得したと主張することができます。

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公道に至るまでの他の土地の通行権

1. 自動車の通行路

私の所有する土地は、いわゆる「袋地」です。私の土地から公道へ出るためには、Aさんの土地にある歩行者用の通路を通ることができます。ところが、父が高齢のため、歩行困難となり車椅子を利用しています。私が、父を病院へ送迎するのに、自動車を使うことが必要になりました。Aさんの土地の通路の脇には、まだ空間があり、普通車なら十分通行できる余地があります。Aさんにこの部分を自動車で通行することを要求できますか。

民法210条の囲繞地通行権により、Aさんに自動車での通行を求めることができます。

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2. 囲繞地通行権を主張できる者の範囲

私がAさんから賃借していた土地は、もともとAさんが所有していた甲地を3筆に分筆したうちの一つです。分筆後、私の賃借している丁地は、公道に面しない袋地となりました。公道に面する部分の乙地と丙地はAさんからBさんとCさんに譲渡されました。Aさんが所有していた頃は、乙地を通って公道へ出ていたのですが、Bさんがその通路に板塀を設置したので、通れなくなりました。Bさんに板塀を撤去して以前のように通してくれと主張することはできますか。

あなたは、Bさんに対して、囲繞地通行権に基づく妨害排除請求権を行使して、板塀の撤去を求めることができます。

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3. 建築基準法の接道要件と囲繞地通行権

私は、昭和23年頃に建売住宅を購入して、居住していますが、家屋が老朽化してきたので、建て替えようと思います。ところが、私の所有地は、幅員4mの公道に面している部分は、1.5mしかありませんので、建築基準法上の接道要件を満たさず、建物の建て替えはできないと言われました。公道に面した土地は、Aさんが所有し、私の土地の前記1.5m幅の通路の横には、2m幅の空地があります。接道要件を満たすために、Aさんの土地について、0.5m幅の通路の囲繞地通行権を主張することはできますか。

残念ながら、Aさんに対し、建築基準法上の接道要件を満たすための0.5m幅の通路を確保するための囲繞地通行権を請求することはできません。

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隣地における建築工事を巡る紛争

1. 日照・通風を阻害する建築工事への対応

隣地に建築される予定の高層マンションにより、我が家の通風が悪くなり、また、昼の間ほとんど日光がささなくなることが予想されます。建築主に対し建築計画の変更を求めましたが、建築主は建築基準法の規制は守っているから問題はないと言って相手にしてくれません。我慢をするしかないのでしょうか。

個別事情により、あなたに生じた損害が社会生活上一般に受忍すべき限度を超えたと認められる場合には、建築工事の差止請求や損害賠償請求が可能です。ただし、公的規制に違反していない建物の場合は、差止請求や損害賠償請求が認められる例は限られます。

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2. 目隠し措置の設置請求

隣地に建築される予定のマンションの窓やベランダの一部が、我が家に面する形で設置される計画であることがわかりました。マンションの窓やベランダに目隠しの設置を求めることは可能でしょうか。

まず、民法235条1項に基づいて目隠しの設置を求めることができるか、検討します。民法235条1項の要件を充たさない場合は、プライバシー権に基づいて目隠しの設置を求めることになりますが、請求が認められるかは、あなたや家族のプライバシーがどの程度侵害されるのか、目隠しを設置するマンション所有者の負担がどの程度か、といった個別事情によることになります。

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3. マンション購入後に眺望が阻害された場合の販売業者の責任

窓からの眺望の良さに惹かれて、分譲マンションを購入しました。眺望の良さは、販売業者のパンフレットやホームページでも、セールスポイントとして強調されていました。しかし、マンション購入後、隣地に高層マンションの建設計画があることが判明しました。マンションを購入する際に、そのような計画があることを販売業者からは全く聞かされていません。販売業者の責任を問うことはできるでしょうか。

販売業者が隣地に高層マンションが建設されることを知っていたか、あるいは、簡単な調査により容易に知り得た場合には、販売業者に説明義務違反が認められ、損害賠償責任や契約の解除が認められる場合があります。
また、消費者契約法の「不利益事実の不告知」(同法4条2項)にあたる場合は、売買契約を取り消すことができます。

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管理されていない、管理できない土地・建物への対応

1.  

隣家が空家で管理されていません。雑草が生え放題で、ゴミも投棄されていて異臭を放っています。不審者が出入りする恐れもあります。法務局へ行って所有者を調べたところ既に死亡していました。どうしたらよいでしょうか。

相続人を調査して、警告するなどして対応を求め、生活するうえで支障をきたしたり、受忍限度を超える状態であれば、相続人に対して損害賠償を求めることができます。場合によっては行政措置の対象となる可能性もあります。

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2.  

隣の空家の相続人を調べてもらいましたが、多くの共有者がいて行方不明となっている人もいます。また相続を放棄して相続人がいない状態になっている持分もあります。空家の管理をしてもらうにはどうしたらよいでしょうか。

現行の民法では、不在者財産管理人制度(民法25条)や相続財産管理人制度(民法952条)を利用することになります。
ただし、手間と費用がかかり現実的ではないので、現在、民法を改正して、所有者不明(共有の一部を含む。)の不動産の管理人を選任して管理する制度を創設する方向で検討がされています。

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3.  

隣の空家が長年放置されて、我が家に傾いてきています。所有者は判明したので警告をしていますが、対処してくれません。このままでは、私の家に倒れかかってきます。どうしたら良いでしょうか。

隣家所有者に対して、所有権に基づく妨害予防請求または妨害排除請求ができます。倒壊によって、損害が生じた場合には、工作物責任等の不法行為(民法709条、717条など)に基づく損害賠償の請求ができます。
また、「特定空家」の要件にあたる場合には、空家対策特別措置法に基づく措置(助言、指導、勧告、命令)を所有者に対して講じるよう、自治体に求めていくこともできます。

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4.  

両親が死亡し、遠方の郷里に遺産の土地・建物がありますが、今後誰も住む予定がありません。周辺は人口が減少しており売却も難しくなっています。どのように対応したら良いでしょうか。

遺産分割協議で当該不動産を相続する者を決めて、安くても良いので売却することや、親に他に見るべき資産が無ければ相続放棄(民法915条1項)の手続きをすることが考えられます。共有となった以後に共有持分を放棄する方法(民法255条)もあります。ただし、登記手続きには他の共有者の協力が必要です。
現在、民法を改正して、一定の要件の下で土地の所有権の放棄を認め、国に帰属させる制度を創設する方向で検討がされています。

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