法律Q&A

法律Q&A

公益通報

公益通報とは

1. 公益通報とは

私は、食品の製造販売を行っている会社の従業員です。最近、私の担当している部署で消費期限の改ざんが行われようとしています。これは良くないと思い、社長に報告したところ、配置転換され、もっぱら雑務に従事させられるようになりました。このような配置転換は許されるのでしょうか。

あなたの社長への報告は、公益通報にあたります。公益通報をしたことを理由に、このような配置転換をすることは禁止されます。

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2. 退職者の場合

私は、食品の製造販売を行っている会社の従業員でしたが、このたび退職しました。会社では、私が在職中、消費期限の改ざんが繰り返し行われていました。退職してすぐに保健所に通報したところ、会社は行政処分を受けました。会社から、私が通報したからだとして、損害賠償請求をされました。このような損害賠償請求は認められるのでしょうか。

新法により、退職者であっても公益通報者となり得ることになりました。新法施行後は、このような損害賠償請求は認められません。

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3. 役員の場合

私は、食品の製造販売を行っている会社の取締役でした。会社で消費期限の改ざんが繰り返し行われていることについて、監査役会へ報告したところ、取締役を解任されました。このような解任は許されるのでしょうか。

新法により、役員であっても公益通報者となり得ることになりました。ただ、役員の解任は「不利益な取扱い」には当たらず、解任自体は禁止されていません。しかしながら、新法施行後は、公益通報を理由とした解任により生じた損害の賠償請求ができます。

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事業者外部への公益通報

1. 行政機関への公益通報

私は、食品の販売を行っている会社の従業員です。最近、私の担当している部署で消費期限の改ざんが行われています。消費者庁などへ通報を行いたいと思いますが、その場合も公益通報者保護法によって保護されるのでしょうか。

公益通報者保護法は通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由(真実相当性)がある場合には、当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報も保護の対象となります。さらに、新法によって、真実相当性がない場合であっても、通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料し、かつ、住所・氏名や理由などを記載した一定の書面を提出する場合であれば同様に保護の対象とされました。

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2. 行政機関による公益通報への対応

行政機関へ公益通報を行った場合に、しっかりと対応してもらえるのか不安です。公益通報者保護法では行政機関が適切に対応する義務などについても定められているのでしょうか。

公益通報者保護法では、公益通報をされた行政機関は、必要な調査を行い、当該公益通報に係る通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置その他適当な措置をとらなければならないこととされています。
さらに、新法によって、適切に対応するための必要な体制の整備についても明示的に義務づけられることとなりました。

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3. 報道機関等への公益通報

対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由(真実相当性)があり、かつ、労務提供先や行政機関への通報では不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合などの一定の特別の事情がある場合には報道機関等への通報も保護の対象となります。

対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由(真実相当性)があり、かつ、労務提供先や行政機関への通報では不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合などの一定の特別の事情がある場合には報道機関等への通報も保護の対象となります。

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内部通報体制の整備等

1. 体制整備と実効性の確保

当社には、パート従業員含め、200人の従業員がいますが、公益通報に関する規程や制度はありません。新法により、当社にも何か相談窓口を設置するなどの対応が必要になるのでしょうか。

新法では、事業者に対し、内部通報に適切に対応するための必要な体制の整備等が義務付けられました。ただし、従業員数が300人以下の中小企業に対しては、努力義務とされました(新法11条3項)。よって、貴社の体制整備は、新法でも努力義務にとどまりますが、可能なところから、検討を始められるのが望ましいです。

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2. 公益通報対応業務従事者

当社では、ハラスメント通報窓口を法務部に置くという内部規程があります。新法で新たに従事者を定めることになったと聞きましたが、この内部規程のままでいいでしょうか。

従事者に該当するかどうかは、部署の名称にかかわらず、公益通報対応業務を行っているかどうかという実質で判断すべきです 1。貴社の現在の窓口が、ハラスメント以外にも内部公益通報窓口もかねる必要があり、その点の内部規程の見直しや社内での周知が必要となります。また、部署の役職で従事者を指定することも可能ですが、従事者となる者自身に従事者の地位に就くことを明確に認識させる必要があるため、書面で個別に通知するか、内部規程で明記することが考えられます。

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3. 調査

私は、内部通報窓口を担当しているのですが、通報があれば、どんな内容でも必ず調査を行わなければならないのでしょうか。また、匿名の通報の場合は、どのように対応したらいいのでしょうか。

A3-3
通報があれば、正当な理由がない限り、調査を行わなければならないと考えられます。そして、制度の実効性確保のため、匿名の通報でも受理する必要があります 1。そのため、個人が特定できないメールアドレスの利用など、匿名での連絡を可能にする仕組みを導入ことが考えられます。
また、通報者の意向に反しても調査は原則可能ですが、その場合、通報者とのコミュニケーションを十分にとり、プライバシー等の通報者の利益が害されないよう配慮する必要があります。

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4. 範囲外共有等の禁止

内部通報窓口に通報があり、調査を実施することになったのですが、担当部署だけでは、十分な調査が行えないため、他部署にも協力を依頼する予定です。情報の取り扱いで注意することはありますか。

事業者は、通報者を特定させる事項の共有を最小限にしなければなりません(範囲外共有の禁止 1)。そのため、調査を他部署に依頼することが必要であるとしても、通報者を特定しなければ調査が実施できないという場合を除き、通報者の情報を共有しないようにしなければなりません。共有が必要な場合も、調査担当者にも秘密保持を誓約させるなどの方法が考えられます。

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公益通報者保護法に関連した裁判例

1.  

公益通報者保護法の適用が争点となった事例

労働者が行った通報について、公益通報者保護法の適用を認め、労働者の救済を図った裁判例として公刊されているものとしては、大阪高裁平成21年10月16日判決がある。
他方で、公益通報者保護法違反が主張された多くの事案では、そもそも公益通報に該当しない、あるいは、外部通報の要件を充たしていないことを理由として、同法の適用が否定されている。東京地裁平成29年9月19日判決も、労働者は自らの通報は公益通報に該当すると主張したものの、公益通報に該当しないとされた事案である。

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2.  

判例法理で労働者が救済された事例

労働者による通報は、労働者が使用者に対して負う誠実義務や秘密保持義務に違反するものとして懲戒の対象となり得る。しかし、他方で、労働者による通報は使用者による法令違反行為の是正・抑止を促進することにもつながるものであり、正当な通報については、仮に当該組織の名誉や信用が毀損されたとしても、違法性は阻却され、不利益取扱いを行うことはできない。
また、1で触れたとおり、公益通報者保護法では、同法が定める厳格な要件を全て充たす場合にしか保護されることがないため、通報者の救済としては十分とは言えない。
そこで、これまでの裁判例では、公益通報者保護法の適用がない通報であっても、①通報内容が真実であり、または真実であると信ずべき相当な理由があるか、②通報の目的が公益性を有するか、③通報の手段・態様が相当なものであったかといった点を総合的に考慮し、正当な通報に該当する場合には労働者の救済を図っている。

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